トウメイノチカク
§8 エクリプシ②


 新しくできたトゥロイアに潜入して、検体の提出と現地調査を行う者のことをエクリプシという。ただし、エクリプシ本人は何も知らされない。いきなり別の世界に放り込まれ、血液や体液などが気付かないうちに勝手に採取され、おまけにサブに害となるものをやはり自覚のないままスパイのように調査させられる。
 七海の頭には、人権侵害、人体実験、強制労働……と不穏な言葉が浮かんだ。
 異世界トリップという言葉は七海も知っている。まさにそれを現実に起こそうとしているのだ。いや、これまでも起きていた。以前ベルクが言っていた、サースナクスにおける「聖なる人」とは、そのエクリプシ、いわばファスティ博士によって無理矢理サースナクスに放り込まれた七海たち第三世界であるシスの人間、つまりはサブのことだ。しかも、消滅した国ではエクリプシの命をまるで動力源のように利用していた。
 サースナクスは最終的に七海たち第三世界の移行地になる。そのため、第三世界の人間、いわばサブの適応度を随時観察する必要があるらしく、定期的に潜入させる必要があるらしい。
「前にユカが言ってたよね、マニを持たない人間は一方通行だって」
「今回選出されたのは、わずかにマニを宿すサブなんだ。胎児のうちに何らかの理由でマニを取り込んだらしい」
 ベルクの気配にかすかな苦みのようなものが差した気がした。
「じゃあ、一度はこっちに来たとしてもちゃんと戻れるの?」
「必要なデータが揃ったら、になるけど」
 ほっとしかけた七海は、いやいやほっとしている場合じゃない、と自分を誡める。サブの人権を守らなければ。ついそんな使命感に駆られてしまう。
「いきなり何の説明もなく別の世界に放り込まれるって……」
 七海の呟きに、ベルクが苦いものを含んだように顔をしかめた。
「これに関しては僕の一存では決められないし、必要なことではあるんだ。一応、サースナクスでは手厚く持て成されるような文化になっているから、そう悪くない待遇だと思うよ」
 言い訳のようなベルクの説明に、七海はむしろ反感を強めた。
 潜入という言葉通り、厚遇されようが冷遇されようが、それこそ存在を認識されなかろうが、重要なのはその地に存在していることであり、現地でのエクリプシへの対応がどのようなものであっても構わない、というのが本当のところだ。
「どれほど好待遇で持て成されたとしても、それまでの日常と切り離されるんだから、かなりのストレスになるんじゃない?」
「もしかして、七海もストレスだった?」
 七海を慮ってこそのベルクの反論に、七海は言葉に詰まった。
「……私は、どっちかと言えばストレスよりはラッキーって方が強かったけど……」
 以前、美帆から借りた異世界トリップ系の話では、主人公は多少の困難はあっても最後には幸せを掴んでいたような……。ただし、あれは物語であって現実ではない。現実的に考えればひどい話だ。とはいえ、似たような立場の七海はベルクに出会えてよかったと思っている。多少の困難はあったものの、物語同様幸せを掴んでいる。
 思わず七海は小さく唸った。
「んー、やっぱり人によるのかな」
「人によるのかもね。どうしても耐えられなければ、記憶を封じてシスに戻せるわけだし」
 記憶を封じて戻せたとしても、きっと七海と同じように残された感覚に戸惑うことになる。
「難しいね。もしそのときはどうしても耐えられなくて元の世界に戻ったとしても、やっぱり戻るんじゃなかったって後悔することだってあるでしょ、そのときはもう一度サースナクスに戻ることはできるの?」
 私情を挟んでいる自覚はある。七海だって一度はベルクたちの世界から切り離されたのだ。
「そのときは二度とシスには戻れないけど、こっちに戻すことはできるよ」
 そっかあ、と呟いて七海は安心した。最後には決断しなければならないにしても、選択肢が用意されている事がせめてもの救いだ。
 ふと気付けば、ベルクは笑ってしまうほどしょぼくれた顔をしていた。
「私は幸せだからね」
「でも最近はストレスが溜まっているようだし……」
「それはこの環境に対してのストレスであって、外に出られるようになれば解消されるから」
「それはもう少しだけ待って。あと少しでキメラがなんとかなりそうだから。それさえ終われば、自由に外に出られるようになるから」
「そのときは、デートしてね」
 七海の提案にベルクは俄然張り切った。

 ベルクの頑張りとは裏腹に、そう簡単に事は運ばなかった。
 ベルクもチームのみんなもキメラに関してはとにもかくにも苦戦した。やたらと優秀なキメラゆえ、どうあっても本体に気付かれずにマニを入れ替えることはできそうになく、結局、サースナクスを一時停止してその隙に全てのことを終わらせるという作戦に切り替えられた。
 世界を一時停止するとは一体……と首を傾げる七海に、ヴェーテがユカに泣き付いたらしい、と大志がこっそり教えてくれた。ユカの力でサースナクスそのものを一時的にユカの作り出すトゥロイアに移行し、そこで様々な処理がなされ、再び元に戻すことになったのだ。ちなみに七海には全く理解できない作戦だ。
『めんどくさい! めんどくさい! めんどくさーい!』
 ユカがまさに地団駄踏んでいる。大人の地団駄は見苦しいものだが、世界的美少女然としたユカがやるとなぜかほほ笑ましく映る。いわゆる小悪魔的だ。ちょっと羨ましい。
『でもユカが残したいって言ったんでしょ、この世界』
 画面の向こうから聞こえてきた美帆の容赦ないひと言に、ユカはわかりやすく膨れっ面になった。
『そのためにみんな苦労してるのに、ユカがその態度ってどうなの?』
 本来であれば、他人のつくった未完成のトゥロイアをいくら血の繋がりがあるとはいえ別の人間が引き継ぐことはない。ましてや、その世界に根付いているキメラを引き継ぐことなど有り得ない。始祖獣の遺伝子を持つキメラだからこそで、そうでなければ一から作り直す方が簡単なのだとか。
『ナナミ、ミホの根性っていつからこんなにひん曲がっちゃったの?』
 モニタに向かってこそっと呟いているようで、その実やたらとユカの声は通る。ユカの背後には美帆がむっとして目を細めている。
『聞こえてるから。いい大人なんだから、自分に都合が悪くなったら人のせいにするのやめなさいよね』
『えー!』
 画面の向こうの美帆が『極上のミルクティー作ってあげるから、ほらがんばれ』とユカを丸め込んでいる。
 最近美帆は強くなった。前から強い人ではあったものの、耳が治ってからは本来の美帆が戻ってきた感じだ。そうそう、出会った頃の美帆はこんな風にちゃきちゃきしていたなあ、と七海は感慨に耽る。と同時に、美帆の耳の不調を本当の意味で理解できていなかったことを今更ながら思い知る。本来の美帆がかすむほど、耳の不調は彼女にとってキツかったのだろう。そこをわかっていなかったことに七海は今更ながら後悔した。
 心の内で落ち込んでいた七海の背中にベルクの手のひらが当てられる。美帆が本来の姿を取り戻したことを喜べばいいのだと、その手のひらが教えてくれるようで、七海は意識を切り替えた。
「実際に世界を一時停止させるってどうなの?」
「面倒だと思うよ。僕には想像もつかないくらい緻密な構築が必要になるだろうし……」
 眉をハの字にしたベルクが、「でも助かった」とほっとした顔になった。
 もう何週間も膠着状態が続いていたのだ。珍しくベルクが苛々していた。七海は内心「珍しいものを見た」とばかりに、ランプに八つ当たりするベルクを観察していた。以前、ベルクが苛々する七海を観察していた理由が何となくわかった。

 すでにベルクたちがやるべき様々な構築はひと通り終わっている。あとはユカが世界ひとつを包み込めるほどのトゥロイアを作り出すだけだ。それと同時にエクリプシもサースナクスに移すことになった。
 全てを同時に行う。とはいえ、一時停止した世界での構築となれば、これまで考えていたよりずっと作業は楽になるらしい。
 ユカがトゥロイアを完成させるまで、サースナクスの管理チームは久しぶりの休暇を取ることになった。



『ぢがれだああああー』
 ユカの地を這うような呻き声に被さるように、モニタからみんなの歓声が聞こえてきた。ベルクも感慨深げに「うわー」と小さな歓声を上げている。
 ユカのトゥロイアが完成した。
 管理チームはせっかくの休暇だというのに、ユカがトゥロイアを作り出す作業を、一瞬たりとも見逃さない! とばかりに付きっ切りで観察していた。モニタにかじりつくベルクの横で七海は暇を持て余し、チームで唯一休暇を満喫している美帆と大志を羨んでいた。
「たった一週間で世界ってつくれるんだねえ。あながち神が七日で世界を創ったっていう聖書も間違いじゃないのかあ」
 七海の少しだけふて腐れた声に、ベルクが気まずそうに笑う。
 一所に留まり続けられないユカは、世界を覆うほどのトゥロイアをひとつ作るよりも、作り慣れている小さなトゥロイアを量産してサースナクス全体を覆うことにしたらしい。ビーズのような小さなコアが大量に出来上がり、それを一つずつ編むように繋げていく、という作業をしていたらしい。
 七海には何をしているのか全く見えなかった。何も見えなかったので、ユカの一挙手一投足にベルクたちが目を輝かせたり、やたらと感心したり、時には唸ったりする様子は不可解でしかなかった。
 それでも、ユカがどれほど集中していたのかはわかる。
「お疲れさま」
 七海が声をかけると、モニタの向こうで美帆のロイヤルミルクティーをちびちび啜っているユカが力なく笑った。
 途中何度かの休憩を挟んだものの、昼夜問わず集中し続けたのだ、相当疲れただろう。七海から見れば、ユカはずっとそこに居るように見えるのに、実際には一所に留まっているわけではないというのが不思議で仕方ない。その意味でも、きっとユカは七海の想像以上に消耗しているのだろう。
『しばらくぼーっとしたい』
『完成したトゥロイアが安定し次第、サースナクスの移行準備に入ります』
 セリアーテの容赦ない声に、ユカのブーイングが上がる。次の瞬間には、ユカの姿は消えていた。『あっ、逃げた』という大志の呟きが聞こえてきた。

 サースナクス儀の隣にそれよりも一回り大きなシャボン玉のようなものが浮かんでいる。それが、ユカのトゥロイアだ。実際には地球を覆うほど大きいのに、作業しやすいよう空間を凝縮させているとかいないとか。
 できたてほやほやの今は、目を凝らすと小さな小さな煌めきが透明な球体の中でゆらゆらたゆたっているように見える。安定すると、今は球体の中で無秩序に浮遊している小さなコアたちがきれいな配列を作り、かすかな煌めきすらサブである七海には知覚できなくなるらしい。
 七海たちシスの人間には見えないものがある。これまでもそんな風に想像することはあっても、どこか芯の部分では信じられなかった。空気のように見えなくても存在は知っているはずだと、七海が知らないだけで科学者など知っている人はいるはずだと、そう思ってきた。
 彼らといると、サブはどこまでもオリジンのサブなのだと突き付けられる。
 ベルクに出会わなければ、何も知らないままでいられただろう。きっと何も知らないまま、ありきたりな一生を終えたのだろう。出会わなければよかったとは微塵も思わないけれど、知らなくてもよかったと思うことは多分にある。知らないより知っていた方がいい、とはよく聞くが、知る必要のないことは知らないままでいい、と今なら思う。
 ん? と通信室の後片付けをしていたベルクが七海を振り返った。どうかした? と言いたげなベルクを見て、七海はベルクに隠し事はできないなと小さく笑った。
「何でもない。ちょっと世界規模での劣等感を感じていたところ」
 どうしようもない気持ちを持て余してしまう七海を見て、ベルクは目を細めて小さく頷いた。優しい顔だった。こんな自分でもよくわからないぐちゃぐちゃした気持ちまで、わからないそのままを理解してくれるのは、きっとベルクだけだ。七海の些細な変化に気付いてくれるのも、きっとベルクだけ。
 なんだか不意に、どうしようもなく幸せな気持ちになった。大きくてあたたかい何かにふわっと心地好く包み込まれるような、そんな幸せ。こういう幸せこそ、知らないより知っていたい。知る必要のあることだと思う。



「くぅぅぅ……」
 思わず声が出た。久しぶりにサースナクスに降り立った七海とベルクは、同じように声を出し、同じように大きく伸びをした。
「うー……眩しい」
「んー……自然の匂いがする」
 目をしょぼしょぼさせているベルクと、大きく息を吸い込む七海。
 シス時間の明日、この世界は一時停止する。その前に、と一旦サースナクス時間に合わせて最終メンテナンスを行っている。その合間に、少しだけ外の景色を見に来たのだ。
「やっぱりこの世界は美しいね」
 初めて降り立った場所。自然豊かな大地。
 朽ちた倒木に苔がびっしりと生えている。木洩れ日の下には可憐な草花が気持ちよさそうに風にそよいでいる。鳥のさえずりや動物たちの鳴き声がそこかしこから聞こえてくる。
「きれいな声」
 遠くから聞こえてくる透き通るような鳴き声は、これまで聞いたことのない音楽のようで、澄ます耳に心地好い。
 とはいえ問題はこの格好だ。
「なんでまだ全身タイツ? 普通の服でもいいって言ってたのに……」
「念のためだよ。移行前に万が一のことがあったら困るから……」
 そう言いながら、ベルクは目を細めて七海の姿を眺めている。絶対にベルクが着せたかっただけだ。ただでさえベルクはアトレーン内にいるときは今まで通りのスーツ姿で、しかもサメルのおかげで着替えることもない。当然、せっかく買った服を着ることもなかった。七海だけが毎日様々な服に着替えているのが馬鹿馬鹿しくなるほどに、ベルクは服に頓着がない。
「見納めって思ってるでしょ」
「思ってないよ。仕方なくだよ」
 間髪入れずに言い返すから余計にあやしい。七海はベルクとは違う意味で目を細めた。
「本当だよ、本当だから──おっと」
 慌てたように本当を繰り返すベルクに呆れて、七海はくるっと背を向けて歩き出そうとしてバランスを崩した。すかさずベルクが七海の身体を背後から支える。
 ベルクの腕の中でほっと息を吐いた七海は、白タイツへの不満と足元が宙に浮いている不安定さ、直前のひやっとした危うさとベルクの腕の中の安堵感、それらが綯い交ぜになって複雑な気持ちになった。
「ありがと」
 なんだかもう笑うしかないなあ、と思いながら、後ろから支えてくれているベルクを振り返り、七海はキスをせがんだ。
「前に、駅で転びそうになったときも助けてくれたよね」
 触れるだけのキスはやっぱりなんだか恥ずかしい。もっとすごいことをしているのに、唇を合わせるだけの行為は純粋な想いだけを伝えているようで、どうにも照れくさい。ふと今の体勢がバックハグと呼ばれるものであることに気付き、七海の恥ずかしさはさらに膨らんだ。
「七海、ここが僕たちの故郷になる」
 背後から聞こえてきたベルクの声はほんの少し緊張していた。
 木々の合間から海が見える。波に反射した光がきらきらと躍っている。
 七海は身体の力を抜いて、背後のベルクに軽く寄りかかった。不安がないわけじゃない。それ以上の安心が寄り添ってくれていることに心強さを覚える。だから七海は唯々わくわくするだけでいい。
「きっと楽しいよ。ベルクがいれば。いつだって」
 七海を背後から抱きしめているベルクの腕の力が強まった。
「今回選ばれたエクリプシは、日本人なんだ」
 振り返ろうとする七海をベルクの腕の力が遮る。
「まだ高校生で、でも、体内にマニを宿していることもあって、彼女が成長しきる前に、子供を産む前に、なんとかする必要がある」
 彼女、ということは、女子高生なのだろう。
 淡々と語るベルクによれば、アフリカ統括本部の協力者の娘なのだとか。両親と死別している彼女は、どちらにしても近いうちにアフリカ統括本部によって保護されることになるらしい。
「保護? それって拉致監禁って事じゃないの?」
「おそらく。よくて研究対象、最悪は消去。セリアーテが偶然見付けた子で、エクリプシとしてサースナクスに送ることで日本支部とアフリカ本部との間でなんとか話が付いた」
 本来は協力者であった彼女の父親にマニが提供されていたらしい。アフリカ本部はウィルス研究を行っており、父親はウィルスキャリアとして協力していたらしい。その父親が発症を遅らせるために与えられていたマニを体外受精で授かった胎児に与え、そのせいで自分は死去したらしい。
「それって、自分の子供を助けるため?」
「さあ。どんな思いで与えたのかは本人しかわからない」
「子供もキャリアにならないように、かなぁ。でも、自然妊娠ならまだしも、体外受精ならそういうのって避けられるんじゃないの?」
 七海の中にある浅い知識でも、現代医療であればそのくらいは可能なのではないかと考えてしまう。
「マニにウィルスをどうこうできる力はないのになあ。それでも不調が整えられるわけだから、マニの知識を持たないサブなら勘違いしてもおかしくはない」
「その結果、子供がエクリプシに選出されるって……」
 聞いたことのない鳥の鳴き声が鋭く響いた。猛禽類だろうか。空の彼方に黒い影だけが過る。
「皮肉だけどね。どちらにしても、本来あるべきではないマニを体内に宿している以上、この先逆に支障が出る可能性が高い」
「今までそういう研究はしてなかったの?」
「いや、されてきた。されてきた上でサブが体内にマニを宿し続けたところでメリットよりもデメリットの方が大きいことが実証されている」
「でも……私が平気なのはベルクとマニの交換をしてるから? それとも天然キメラだから?」
「いや。成長後であればメリットしかないんだよ。マニが留まることはないから。まだ成長しきる前の子供や、ましてや胎児の場合はデメリットが大きい。大抵はマニが体内に留まるせいで循環器系に負担が生じる」
「たとえば、心不全とか?」
「そうだね。二十代前半で突然死する確率が高い」
 ようやくベルクの腕の力が弱まり、七海は体の向きを変えて彼と正面から向き合った。初めてエクリプシの話を聞いたときのベルクの気配を思い出す。
「同じ日本人だから、私が傷付くと思った?」
 ベルクの眉が情けなく下がる。
「その子、こっちに来ることで生きることができるんでしょ? どうしても嫌なら戻れるんでしょ? そのときはマニが体内からなくなっているから、死んじゃうこともないんでしょ?」
 ベルクは七海の質問に一つ一つ大きく肯いてみせた。
「セリアーテが見付けた最善の方法なんだ」
「どうやってその子を見付けたの?」
「本当に偶々らしい。ふと目について、よくよく見ればマニを宿していることに気付いたところで監視中のアフリカ本部から釘を刺されたらしい。それ以降逆に気になって時々様子を見ていたって」
 ふと、それはどういう感覚なのだろう、と気になった。
「セリアーテにとってその子ってどういう存在なんだろう」
 七海の呟きがベルクの眉尻を思いっきり下げた。
「言い方は悪いけど、お気に入りのペットを見る感覚に近いかもしれない」
 すとん、と七海の中にその感覚が落ちてきた。そう、きっとそうだ。とても気に入っていたり、どんなに大事な存在であっても、所詮サブは彼らオリジンと同じ存在ではない。そこには明確な線引きがある。その線の内側に入れるのはマニの交換ができるパートナーだけ。