シロクマのたなごころ
第一章 §2


 結局、あの豪華なお部屋に滞在させてもらえることになった。さすがにあの部屋は豪華すぎると遠慮したものの、他の客間も同じような感じで、他に滞在する場所がないと、ウサギのメイドさんに言われてしまった。

「ならせめて、みなさんのお手伝いくらいはさせてください」
「それにも及びません。実は毎日暇でして。お嬢様にお手伝いいただくと、私共のすることがなくなってしまいます。呪い以降一番お時間を持て余されているのが主となりますので、お嬢様はどうか主のお相手をしていただけると助かるのですが……」

 ヒツジの執事さんが城主様の話し相手というより、暇つぶしの相手になってくれと言うので、そんなことならお安いご用だと、毎日城主様と過ごしている。
 城主様も暇すぎて、みんなの仕事を手伝おうとするらしい。

 午前中は城内の見回りについて回り、午後からは城外の見回りについて回り、おやつの時間の後は二人で静かに城主様の執務室で過ごしている。
 城主様の知っているおとぎ話を教えてもらったり、私の知っているおとぎ話を教えたり、城主様のそれまでの生活を教えてもらったり、私のそれまでの生活を教えたり。
 まあ、つまりはどうでもいいおしゃべりをして過ごしている。

 見回りの時は必ず手を繋がれた。しかも互いの指をからめての恋人つなぎだ。

「こうして指を絡めてそなたを手を繋いでいると、私も自分の指の感覚を感じることができる」
 感慨深げに繋がれた手を見ている城主様を見ると、恥ずかしいからやめてくださいとは言えなかった。

 毎朝メイドさんたちも私と手を繋ぎたがるので、そういうことなのだろうと思っている。
 城主様以外の男の人たちとは、最初の握手会以降、手を握ることはない。きっと私が女性だから遠慮しているらしい。その点、城主様は偉い人だからか遠慮がない。

「魔女の名前、わかりそうなんですか?」
「いや、もう半分上諦めている」
「でも、半分はわかっているんですよね」
「ああ、後半のティーヌという部分だけはわかっている」
「なんとかティーヌって名前なのかぁ……」

 なんとかティーヌといえば、友人のひとりに留学生のエルネスティーヌがいる。彼女もよく「呪われてしまえー」とか「呪ってやるー」とか、振られる度に流暢な日本語で叫んでいる。どこで覚えて来たんだか。見た目クールな超絶美人なのに、中身がまるでお子様なので、そのギャップに相手が幻滅するらしい。そのギャップが可愛いのに。
 先日は「ゆるいだろう」的なことを言われて怒り狂っていた。まだ致してないにもかかわらず、見た目でゆるいとは何事だと、それはそれは盛大に怒りをまき散らしていた。終いには「あいつ共々呪ってきた!」とすっきりした顔をしていたので、どこかで怪しい呪文でも唱えてきたのだろう。

 そんな友人の話しをしていたら、みるみる城主様の顔が強ばった。見た目ライオンなのでちょっとコワイ。

「いや、ゆるいとは言ってない。彼女では私とはサイズが合わないだろうと言っただけで……むしろ逆なんだ、彼女は小柄だったゆえ……」
「は?」

 男の人にあけすけに「ゆるい」と言ってしまう私も私だが、同じような経験があるのか、城主様も大概だ。つまり自分のは大きいと言いたいのだろうか、このライオンは。

「彼女の名は?」
「は? 彼女って、エルネスティーヌ?」

 その瞬間、あちこちで叫び声が上がった。
 何事かとライオンの城主様と顔を見合わせていると、渋いおひげのおじ様が執務室のドアをいきなり開けて駆け込んできた。後にメガネのメイドさんが続く。

「セドリックにアンナ……」
 城主様が呆けたように呟く。

「旦那様はなぜ……」
 聞こえた渋いおひげのおじ様の声は、ヒツジの執事さんと一緒だ。ということは、後ろのメガネのメイドさんはウサギのメイドさん?

 次々と駆けつける人を見ると、みんな人の姿に戻ったお城の人たちだ。雰囲気がまるで変わらないので、なんとなくわかる。

「呪いが解けた?」
「おそらく呪いの一部が解けたのか、呪いの一部だけ解けなかったのか。なぜ旦那様は……」

 みんな人の姿に戻っているのに、城主様だけがライオンのままだ。

「それはね、私を馬鹿にしたからよ!」

 怒りを含んだ声が聞こえ、聞こえた声に顔を向けると、窓の外に浮かぶエルちゃんがいた。どこをどう見ても、私の友人のエルちゃんだ。

「エルちゃん?」
 そう声を掛けると、びっくりした顔で「さーちゃん?」と聞き返され、思いっきり頷くと、慌てて窓をすり抜けながら近くにやって来た。

 窓! すり抜けた! びっくりして目の前に来たエルちゃんに触れて、実物か確かめてしまう。

「さーちゃん、なんでここに居るの?」
「さあ? 家の近くのコンビニでアイスを買った帰りに、ここの森に迷い込んだっぽい」
「なんで?」
「さあ? エルちゃんわかる?」
「わかんない」

 ぺたぺたとエルちゃんを触って、声を聞いて、やっぱりエルちゃんだとわかったので、とりあえず落ち着いた。窓をする抜けるって、イリュージョン?

「それより、エルちゃんがここの人たちを呪ったの?」
「だって! だって! この人私のことゆるいって言うんだもん! 許せないでしょ」

 ライオンの城主様をびしっと指さしながらエルちゃんが叫ぶ。

「ねえ、ねえ、じゃあ、エルちゃんって魔女なの?」
「へ? ああ、そう。魔女なの」
「へーえ。すごいんだねぇ」
「えへへ、そうでもないよ」

 少し赤くなりながら、満更でもなさそうに照れるエルちゃん。魔女だから窓をすり抜けられたのか。すごいな魔女。

「それで、なんでライオンの城主様だけ呪いが解けないの?」
「だってゆるいって言うから……」
「でも誤解っぽいよ、それ」
「うそ! だってサイズが合わないって言われたもん」
「なんか、逆っぽいよ」
「うそぉ」
「本当だ。小柄な魔女殿ではその……私のは大きすぎるのではないかと思ったのだ」
「……なにその無駄な自信」

 目を細めて、じとっとライオンの城主様を見るエルちゃん。うん、気持ちはわかるけど、誤解だとわかったんだからね。

「呪い解いてあげれば?」
「無理」
「へ?」
「呪いってね、簡単じゃないの。ちゃんとそれを解く方法でしか解けないの」
「そんな簡単じゃないことわざわざしたんだ……」
「だってむかついたんだもん」
「エルちゃん、でも誤解だったんだよ」
「心から愛する人とエッチすると解ける。ただし互いにイクこと前提」
「……なにそれ」
「だって、むかついたんだもん」

 唇をとがらせて言うエルちゃんは、まるで拗ねた子供だ。

「まあ、呪いの解き方がわかったならなんとかなるか。ねえエルちゃん、戻るとき私も一緒に連れてってよ。帰り方がわからなかったんだよね」
「あー、ごめん、私が連れてきたわけじゃないから無理かも」
「そうなの?」
「うん、私が連れてきたんなら、私が連れて帰れるけど……。さーちゃん、どうやって来たの? 誰かに呼ばれたとか、引っ張られたとか、そういう感じなかった?」
「いやまるで」
「うーん、どうしようかなぁ」
「エルちゃん、どうにかして?」

 ふとエルちゃんが私の後ろに目をやり、にたぁと、それはそれは悪い顔で笑った。

「さーちゃん、あのライオン好き?」
「ん? 城主様? 別に嫌いじゃないけど。好きか嫌いかと言われると、好きな方だと思うよ」
「嫌いじゃないんだ?」
「嫌いじゃないよ。嫌いになる要素がないもん」
「あのライオン、元はめっちゃイケメンだよ。私が一晩のお相手を頼むくらいのイケメン!」
「エルちゃん、それだとエルちゃんがそれだけの女の子に聞こえるよ」

 エルちゃんと二人、こそこそと話し始めると、なぜかみんな揃って聞き耳を立てている気配がする。

「いやいや、そのくらいイケメンなんだってば」
「ふーん。でも今も綺麗なライオンだよね。たてがみとかすごく綺麗」
「そういえば、さーちゃんイケメン好きじゃなかったっけ?」
「うん。特に」
「でも嫌いじゃないんだよね、あのライオンのこと。さーちゃんがそう言うのって珍しいよね。大抵は興味ないって言ってたじゃん」
「そうかなぁ。単にエルちゃんの言う人にたまたま興味がなかっただけじゃないの?」
「たぶんだけどね、さーちゃんはあのライオンのためにここに来たんだと思うよ。あのライオンの呪いを解くために」
「そんな都合のいい。それはないよ」
「まあ、いいからいいから」

 そう言いながらエルちゃんが私の腕を引っ張って、城主様の側まで連れて行き、私と城主様をくっつけて、城主様に「ちょっとさーちゃんにちゅーしてみて」と、にたにたしながら囁いた。

「いや、それは……」
「いいからいいから、すればわかるから」
「何がわかるんだ?」
「呪いを解く相手かどうか」
「なるほど」

 あっさり城主様にキスされた。私の意見は? と思っているうちに、あまりに城主様とのキスが気持ちよくて、ついついうっとりしてしまう。

「おお!」

 みんなが驚く声が聞こえる。そういえば、みんなの前だった。
 城主様の胸に手を突っ張らせ、離れようとすると、一瞬むぎゅっと抱きしめられてから、城主様はキスをやめた。

「ああ……」
「ね、そういう事なのよ」

 みんなの残念そうな声に、エルちゃんがドヤ顔で答えている。
 なんなんだ一体?

「あのね、さーちゃんとちゅーしている間は、ライオンがイケメンに早変わり。で、ちゅーが終わるとイケメンがライオンに早変わり。ってなわけよ」
「ええ! そうなの? 私も見てみたい!」

 うっかり叫んだのが運の尽き。
 エルちゃんが再びにたぁと笑い、周りのみんなをぐるっと見渡している。なぜかみんなが頷いている。

「という訳で、二人でイクまで籠もっていいよ、城主様?」

 エルちゃんが最後にこてんと首をかしげると同時に、私と城主様だけが私の使っている客間に居た。どういうこと?
 次の瞬間、エルちゃんのぐへへな声が部屋に響いた。

『ちゃんと中で(・・)、だからねぇ』

 で。まんまとぺろりと食べられた。城主様は、無駄な自信どころか大層な自信をお持ちだった。



 ゆるゆると思考が動き始める。
 体がほかほかする。すごくあったかい。あったかくて気持ちいい。

「目が覚めたか?」

 んーぅ、好きな声だぁ。んん? この声、ライオンの城主様?
 目を開けると、仰け反るほどの美形が目の前にいた。イケメンとかそんな軽い感じではない。美しすぎるほどの顔が目の前にあり、思わず見入ってしまう。

「すっごくきれい……」

 思っていることが口から零れるほどの美形。もはや芸術品だ。その芸術品が笑った。それはもう目が潰れるかと思うほどの衝撃で、思わず目を瞑ったのに、目を瞑っても尚その残像が瞼に焼きついていた。美形強烈。

「そなた、名は?」
「んー? 紗奈」
「サナか、いい名だな。私はラウルだ」
「ラウル? ……もしかして城主様?」
「なんだ、気付いていなかったのか?」

 くつくつと美形が笑う。その振動が伝わってきて初めて、自分が美形の腕に中にいることに気付いた。そっと自分の姿をのぞき込むと、素っ裸だ。うっかり美形の裸体まで目に入ってしまったじゃないか!
 うそん! と思って、顔を上げて美形を見ると、堪えきれなかったのか、思いっきり声を上げて笑い出した。

 そうだ、そうだった。
 エルちゃんに無茶振りされて、城主様と致したんだった。なんか、ものすごく強烈に気持ちよかったことしか覚えてない。かつて経験したことのない気持ちよさだった。あんな強烈な快感……。

「これはもう他の人とはできないだろうなぁ……」
「他の者とさせるつもりはないが」

 むっとしたような美形の声が聞こえた。うん、これ聞かない方がいい感じだ。
 とりあえず城主様の呪いも解けたのなら、エルちゃんと一緒に帰ろう。

 シャワーを浴びようと、ベッドから下りようとすれば、すとんとそのままベッドの下に座り込んでしまった。

「あれ?」
「ああ、腰が抜けたか。湯を使うのであろう? 連れて行こう」

 おまけに足の間から致した証が流れ出てきた。
 それを目に入れた瞬間、なんだか泣きそうになってしまって、思わず美形に両手を伸ばせば、すかさず美形に抱えこまれ、その首に手を回してぎゅってしがみついてしまった。よくよく考えれば、その元凶は美形のはずなのに……。
 美形に抱え上げられ、お風呂に連れて行かれ、そのまま体中を厭らしい手つきで洗われ、まんまとまたもやぺろりだ。
 お風呂に入る前より一層ぐったりどころかぐんにゃりとなって、ベッドに戻された。

「少し眠れ」
 頭を撫でながらめちゃめちゃいい声でそう言われ、やっぱり好きな声だなぁって思いながらそのまま遠慮なく寝た。



 目が覚めると、にたぁと笑うエルちゃんが、ベッドの脇に腰掛け、ベッドに身を乗り出し、頬杖付いて私を見ていた。

「どうだった? すっごくイケメンだったでしょ」
「うん。イケメンって言うより、美形だね。芸術品みたいだった」
「でしょでしょ、初めて見たときびびびって来たのよね」

 どこの昭和のアイドルだ。びびびって……。
 よっこらしょとなかなか思うとおりに動かない体をなんとか起こす。すこぶるだるい。

「エルちゃん、いつ帰る? 帰るとき私も連れてってくれる?」
「うん、いいよ。呪いも解けたし、さーちゃんももうここに縛られてないし」
「そういえば、あっちはどれだけ時間が経ってるの?」
「ああ、大丈夫。さーちゃんがこっちに来た直ぐ後に戻れるようにするから」
「本当? 実は奮発してダッツ三つも買ったのに、食べる前にこっちに来て、気が付いたらどろどろに溶けてたんだよねぇ。あ、帰ったらエルちゃんにも一個あげるね。限定のやつ。一緒に食べよ」
「本当! ありがと。んーそうだなぁ。とりあえず今日はこのままお城に泊めてもらって、明日帰ろうか」
「わかった。明日ね」
「あ、ご飯用意できてるって言われたんだ。アンナさんが支度手伝ってくれるって」

 エルちゃんの声が聞こえたのか、メガネのメイドのアンナさんがドレス片手に近付いて来た。力が抜けきった体をなんとか動かして、ドレスと言うよりワンピースに近い、被るだけで着られる服を用意してくれていたので、なんとか着られた。ありがたい。今日はコルセットとか無理だ……。

 着替え終わると軽く髪を結われ、いつの間にいたのか美形の城主様にひょいと抱き上げられて、食堂に向かう。いや、確かに歩けるほどの体力は残ってないけど……。うん、何も言うまい。

 ふと見ると、エルちゃんが隣を歩きながら、にたぁと笑ってた。エルちゃん、その笑い方やめた方がいいと思う。

 このお城ではみんな揃ってご飯を食べる。ご飯くらいみんなで食べようって、呪われてすぐに城主様がみんなに提案したのが始まりで、朝昼晩、みんな揃ってご飯を食べる。だから食堂には全ての料理が並び、みんな揃って一斉に食べ始める。
 そういえば、エルちゃんが何食わぬ顔してみんなと一緒にご飯を食べているけど、呪いの元凶だよね。みんな怒ってないのかな。

「怒りは最初の百年くらいでなくなったなぁ」
 そう教えてくれたのは、タヌキの侍従だった丸顔で少し垂れ目のポールさんだ。確かに何気にエルちゃんはみんなに馴染んでいる。まあ、みんながいいなら別にいいか。

 フォークを持つ手に力が入らず、仕方ないのでエルちゃんに食べさせてもらおうと思ったら、美形の城主様が当たり前のように給餌を開始した。あわあわしているのは私だけで、誰も城主様の行動を気にしていない。いや、おかしいよね、絶対。
 とはいえ、目の前に一口サイズの料理が差し出されれば、ぱくっとしてしまうのは腹減りのサガだ。だってものすごくお腹が減ったんだもん。差し出される度にぱくっぱくっと食べていたら、お腹がいっぱいになった。

 再び美形の城主様にベッドまで抱えて運ばれ、再び裸に剥かれ、再びぺろりと食べられた。いやもう呪い解けたし。
 合間合間に名前を呼ばれ、名前を呼ばれる度になんだか嬉しいようなせつないような、なんだが鼻の奥がつんとするような、そんな気持ちになる。

 私は、一度も城主様の名前を呼べなかった。



 翌朝目が覚めると、再び美形が目の前にあり、うっかり見とれているうちに、おはようのキスをされ、お風呂に連れて行かれ、厭らしく体中を洗われ、やっぱりもう一度ぺろりと食べられ、ぐったりしたままメガネのメイドのアンナさんに渡され、こちらに来たときに来ていた部屋着を着せられた。
 着替え終わると、やっぱり美形な城主様に抱えられ、執務室に運ばれると、にたぁと笑うエルちゃんが待っていた。

「じゃあ、帰ろうか」

 そう軽い調子でエルちゃんが言った瞬間、いつの間にか手にはコンビニの袋を持って、あの角に立っていた。

「ほら、さーちゃんちでダッツ食べよう!」
 エルちゃんがうきうきしながら私の手を取り歩き出す。

 なかなか思考がこの現実に追いつかないまま、一人暮らしをしているマンションの私の部屋の前までよろよろと連れて来られ、鍵を開け、ドアを開け、エルちゃんが「おじゃましまーす」と言いながら、家に入り、私もそれに続いてドアを閉めた。

 ばたん。

 その音を聞いた瞬間、ぼたぼたと涙が零れた。

「さーちゃん」
 エルちゃんが、にたぁと笑いながら近付いて来て、むぎゅって抱きしめてくれた。

「さーちゃん、城主様の名前、覚えてる?」
「うん、ラウル」
 えぐえぐとしゃくり上げながら言えば、後ろからむぎゅっと抱きしめられた。ん? 前にはすすすっと私から離れたエルちゃん、じゃ、後ろは?

 振り向くと玄関ドアの先がお城の私が使っていた客間に繋がっていた。

「どーゆーこと? エルちゃん!」
 涙も引っ込み、ぎろっとエルちゃんを見ると、やっぱりにたぁと笑ってた。

「さーちゃん、左手見て」
 いつの間にか左手の薬指に少しごつい紋章入りの指輪がはまっていた。いつの間に?

 後ろから回されていた手が目の前に出され、その指にも同じ紋章の、私のより更にごつい指輪がはまっていた。

 そんなやりとりをしている間に、お城の人たちが繋がっている玄関ドアから、わらわらと私の部屋にやってくる。靴脱いで! 靴!

「呪いのお詫びにこの世界と繋げたの。さーちゃんの指輪と城主様の指輪が鍵ね!」

 さも「いいことしたでしょ!」と言わんばかりのドヤ顔のエルちゃんに、げんこつをお見舞いしておいた。